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ispace、2022年末頃の打ち上げに向け、フライトモデル組み立ての最終工程に着手 HAKUTO-Rのミッション1と2の進捗報告を実施

2022年1月25日

株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)は、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション1とミッション2に関する進捗を発表致しました。

■ 民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1、2の主な進捗

●   ミッション1で使用予定のランダー(月着陸船)のフライトモデルは、2022年2月中[*]に組立・統合の最終段階を迎える予定です。2022年春頃[*]までにペイロードの統合が完了し、その後環境試験を行った後に打ち上げ予定地であるアメリカへ輸送を行う予定です。

●   ミッション1の打ち上げ時期は、現時点で2022年末頃[*]を予定しています。

●   ミッション2の打ち上げ時期は、現時点で2024年[*]を予定しています。社内外の状況を勘案の上、今回、当初予定の2023年から変更を致しました。

●   ミッション2で初めて搭載することを予定しているマイクロローバー(小型月面探査車)の構想を公開致しました。

 

(左)ispaceのエンジニアがフライトモデルを組み立てている様子   (右)ランダーに燃料タンクを設置している様子

2021年6月から、ispaceのQuality Control & Assembly, Integration & Testing (AIT)グループのメンバーはドイツのランポルツハウゼンにあるアリアングループの施設に常駐し、ミッション1で使用するランダーのフライトモデルの組立作業を行っています。ランダーは組立・統合の最終工程にあり、今後多層断熱材やソーラーパネル、ペイロードや展開機構などの部品の取り付けを行い、最終環境試験を行う予定です。

また、打ち上げ後のランダーの運用に備えるため、日本橋に開設したミッションコントロールセンター(管制室)では、ミッションで起こり得る課題を想定したシミュレーション訓練を開始しました。HAKUTO-Rのミッションコントロールセンターの運用は、NASAやJAXA、ESA等の様々な宇宙ミッションの運用経験のあるエンジニアによって行われています。

ミッション2ではペイロードとしてマイクロローバー(小型月面探査車)を月に輸送する予定です。ispaceはローバーの小型軽量化の開発を続けていて、将来的には複数のマイクロローバーを月面に輸送して探査やデータの収集を行うことを想定しています。マイクロローバーはルクセンブルクにあるispace Europeが設計を行い、これまで蓄積されたローバー開発の知見が活かされています。また、ルクセンブルク宇宙機関が管理し欧州宇宙機関が実施するLuxIMPULSEプログラム の一環として、ルクセンブルク宇宙機関との共同資金で開発を行っています。ispace Europeには現在20名以上のスタッフが在籍しており、今年で設立5周年を迎えます。

マイクロローバーの初期構想図

●   HAKUTO-Rコーポレートパートナーとの協業進捗とサポーティングカンパニーについて

■    日本特殊陶業株式会社は、HAKUTO-Rのミッション1において月面で固体電池の実証実験を行うことを計画しています。日本特殊陶業にて製造されたフライトモデル電池はランダーに設置され、打上に向けた準備を行っています。

HAKUTO-Rのランダーに設置される日本特殊陶業の固体電池

■    シチズン時計株式会社が独自に開発した素材「スーパーチタニウム™」を活かした部品が、ランダーフライトモデルの着陸脚に提供されました。また、HAKUTO-Rのミッションコントロールセンターで時刻表示に利用するGPS受信機がシチズングループから提供され、ミッション中に活用される予定です。

 

(左)HAKUTO-Rのミッションコントロールセンターの時刻表示 (右)UTC(協定世界時)を表示するディスプレイ

また新たに、HILLTOP株式会社と株式会社フジキンがHAKUTO-Rプログラムのサポーティングカンパニーに参画することに合意致しました。

■  HILLTOP株式会社はサポーティングカンパニーとして、ランダーのフライトモデルや試作品の金属部品加工のサポートを行っています。

■  株式会社フジキンはサポーティングカンパニーとして、宇宙開発、水素燃料技術で培った経験をHAKUTO-Rに活かしていくことを目指しています。

●  株式会社ispace Founder & CEO 袴田武史のコメント

「これからの1年は、私達にとって最も重要な年になります。ミッション1に向けて、様々な努力を積み重ねてまいりました。ミッションに携わる一人一人がこの挑戦に貢献していて、私は日々そのことに感謝しています。最初のミッションに向けて実行しなければならないことはまだ多数存在しているので、引き続き注力していきたいと思います。来年の今頃には、新年のお祝いの席で月を見上げて、今までとは違う景色を見ることができると前向きに考えています。」

(参考)HAKUTO-Rミッション1ペイロードについて

ランダーの上部にはペイロードの搭載が可能で、ミッション1では7個のペイロードを輸送予定です。

●    HAKUTO-Rのコーポレートパートナーである日本特殊陶業株式会社の固体電池

●    UAEドバイの政府宇宙機関であるMBRSCの月面探査ローバーRashid

●    JAXAの変形型月面ロボット

●    カナダ宇宙庁によるLEAPの一つに採択されたMCSS社のAIのフライトコンピューター

●    カナダ宇宙庁によるLEAPの一つに採択されたCanadensys社のカメラ

●    HAKUTOのクラウドファンディング支援者のお名前を刻印したパネル

その他のペイロードについては後日公開予定です。

ispaceのミッション 2に搭載可能なペイロードの容量はまだ残っており、現在ペイロードサービスに関して様々な交渉が行われています。

■ 株式会社ispace (https://ispace-inc.com/)について

「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、160名以上のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営していました。2021年12月時点で総計約218億円超の資金を調達。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っています。

ispaceは、NASAのCLPS(Commercial Lunar Payload Services)プログラムに選出されたドレイパー研究所のチームの一員でもあります。2020年12月に、ispaceとispace Europe S.A.はNASAから月面で採取した月のレゴリスの販売に関する商取引プログラムの契約を獲得しました。ispace Europe S.A.はESAのPROSPECT(月面での水の抽出を目的としたプログラム)の科学チームの一員に選ばれています。

■ HAKUTO-R (https://ispace-inc.com/hakuto-r/)について

HAKUTO-Rは、ispaceが行う民間月面探査プログラムです。独自のランダー(月着陸船)とローバー(月面探査車)を開発して、月面着陸と月面探査の2回のミッションを行う予定です。SpaceXのFalcon 9を使用し、それぞれ2022年[*]に月面着陸ミッション、そして2024年[*]に月面探査ミッションの打ち上げを行う予定です。このプログラムは、月の情報と地球―月輸送サービス構築に向けた技術検証を行います。HAKUTO-Rのコーポレートパートナーには、日本航空株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、日本特殊陶業株式会社、シチズン時計株式会社、スズキ株式会社、住友商事株式会社、高砂熱学工業株式会社、株式会社三井住友銀行、SMBC日興証券株式会社が参加しています。また、HAKUTO-Rメディアパートナーには、株式会社TBSホールディングス、株式会社朝日新聞社、株式会社小学館が参加しています。

 

[*]  2022年1月時点の想定

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