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日本特殊陶業が民間月面探査プログラムHAKUTO-Rのコーポレートパートナーに参加

2019年2月22日

HAKUTO-Rのミッションで月に全固体電池を輸送
世界初となる月面での全固体電池の技術実証試験を実施予定

日本特殊陶業株式会社(本社:愛知県名古屋市 会長兼社長:尾堂真一 以下:「日本特殊陶業」)と株式会社ispace(所在地:東京都港区、代表取締役CEO:袴田 武史、以下「ispace」)は、日本特殊陶業が世界初の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」にコーポレートパートナーとして参画することで合意しましたのでお知らせ致します。日本特殊陶業は、全固体電池の分野でHAKUTO-Rと技術協業を行い、日本特殊陶業が開発する全固体電池を、2021年のHAKUTO-Rのミッションにペイロードとして搭載し、月面での世界初となる全固体電池の技術実証試験を行う予定です。

宇宙での主な動力源は電力です。宇宙で電力をいかに安定的に供給するかは、宇宙機にとって最も重要な課題の一つです。そこで重要な役割を果たすのが、電力を溜め、供給する役割を果たす電池です。現在の宇宙開発では、リチウムイオン電池が使われていますが、適応できる温度範囲が狭いため、ヒーターの積載や、熱放出の工夫をする特殊な付属機構が不可欠です。

月面の夜間や、極域の影では、-150度以下と極低温になり、液体のリチウムイオン電池の電解液では、凍結してしまうため、これまでの熱設計では適応することができません。また、凍結後に融解したとしても、凍結・融解時の体積変化が電池の内部構造にダメージを与えるため、電池として機能しないと考えられます。将来の月極域の探査をはじめ、こうした過酷な環境でも電力を安定的に供給できる電池が非常に重要になります。

日本特殊陶業は、全固体電池の研究・開発を進めており、液体のリチウムイオン電池に比べて、稼働可能な温度範囲が広く、さらに安全性も高いため、実用化に向けて、さまざまな産業での研究開発が進んでいます。日本特殊陶業の全固体電池は、有毒ガス(硫化水素)が発生しない環境安定性の高い「酸化物セラミックス」を使用するため、電解液を使用しているリチウムイオン電池や硫化物タイプの全固体電池に比べ、より安全と言う特長があります。また、製造プロセスにおいて、焼結ではなく、加圧で正極層、固体電解質、負極層を圧着させるため、大型化も可能で、ドローン等の民生用の分野のみならず、電動バイクや電気自動車等のモビリティー用途での使用も視野に入れています。

日本特殊陶業は、「IGNITE YOUR SPIRIT」というコーポレートメッセージを掲げ、人々の魂に火をつける挑戦を続けています。多くの人々の心に火をつけるであろうHAKUTO-Rの月への挑戦に賛同し、今回コーポレートパートナーとして参画します。今回の民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」においては、開発する全固体電池を、2021年のHAKUTO-Rのミッションに搭載し、民間企業として初めてとなるペイロードカスタマーとして試験モジュールを月に輸送し、月面での世界初の全固体電池の技術実証試験を行う予定です。

日本特殊陶業とHAKUTO-Rは、開発中の全固体電池の月面での技術実証試験を通して、人類の宇宙進出に貢献し、さらに全固体電池の活用の場を広げていきたいと考えています。

 

■日本特殊陶業株式会社 代表取締役会長兼社長 尾堂真一のコメント

「当社のコーポレートメッセージである“IGNITE YOUR SPIRIT-心と夢に火をつけろ-”を体現するHAKUTO-Rの挑戦にコーポレートパートナー、そしてペイロードの提供者として参加します。全固体電池の持つ可能性を最大限に活かして、宇宙開発に貢献していきます。」

■株式会社ispace 代表取締役 袴田武史のコメント

「電力供給は、産業を月で構築する際に最も重要な要素の一つとなります。今回の成果が、人類が宇宙で生活する世界を作る第一歩となるでしょう。」

 

■会社概要

日本特殊陶業株式会社(https://www.ngkntk.co.jp/

1936 年に創業し、名古屋市に本社を構える総合セラミックスメーカーです。内燃機関におけるスパークプラグ、排気酸素センサにおいては、世界トップシェアを誇り、また、半導体部品におけるパッケージ、機械工具、医療用に用いられるバイオセラミックス、産業用セラミックスなど幅広いラインアップを提供しております。世界中に販売・製造拠点を有し、15,000 名を超える従業員が世界の皆さまに新たな価値を提供できるよう取り組んでいます。現在は、持続可能な社会における環境エネルギー、次世代自動車、医療などの製品開発にも取り組んでおります。今後も、「ナンバーワンかつオンリーワンのものづくり」を目指し、変革と挑戦を続けてまいります。

株式会社ispace (http://ispace-inc.com/jpn

「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。2018年2月までにシリーズA国内過去最高額となる103.5億円の資金調達を実施。日本初民間開発の月着陸船による「月周回」と「月面着陸」の2つのミッションを行うプログラム「HAKUTO-R」を発表。アメリカSpaceX社のFalcon 9ロケットで2020年と2021年に打ち上げ予定。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動。

 

■用語解説

HAKUTO-R (http://ispace-inc.com/hakuto-r

HAKUTO-Rは、ispaceが2021年までに行う史上初の民間月面探査プログラムです。独自のランダーとローバーを開発して、2020年に月周回と2021年に月面探査の2回のミッションを行います。SpaceXのFalcon 9を使用し、それぞれ2020年半ばに月周回ミッション、そして2021年半ばに月面探査ミッションの打ち上げを行う予定です。

②全固体電池

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池の「電解液」に代わり、「固体電解質」を使用した電池です。電解質が可燃性の液体から不燃性の固体に変わることにより、燃えることなく安全性が向上します。

また、液体のように蒸発・凝固することなく、高温から低温まで幅広い温度域での使用が可能になります。さらに、従来は液体と反応して使用できなかった高容量の電極材料が使用できることに加え、固体のため積層構造でセルを集積することが可能になり、高エネルギー密度が実現できます。

③ランダー(月着陸船)

月着陸のための宇宙船。HAKUTO-Rが開発するランダーは、無人で地球から通信で操作を行います。小型軽量ながら30kgのペイロード(荷物)の搭載が可能です。ランダーは、ロケットで地球から打ち上げられ、地球の静止軌道でロケットから切り離された後、エンジンを点火し、月まで航行します。そして月周回軌道投入後に、エンジンを逆噴射しながら月面に軟着陸します。着陸後は、地球と通信するための基地局となり、地球からのコマンドをローバーに伝えます。

④ローバー(月面探査ロボット)

HAKUTO-Rは、小型の4輪駆動の月面探査ロボット「ローバー」を開発しています。日本の小型化技術を駆使し、素材や構造を1グラム単位で突き止めて小型軽量化を実現。太陽光で発電し、搭載しているバッテリーに蓄電して電気の力で動き、搭載するカメラや各種センサーなどで、月面の探査を行います。2021年半ばのMission2では、2台のローバーをランダーに搭載して月面へ輸送し、着陸後に月面の探査を行う予定です。

⑤ペイロード

ロケット、ランダー、ローバーなどの宇宙機に搭載される積載物(荷物)。今回、2021年半ばに打ち上げを予定しているHAKUTO-Rのミッションで、日本特殊陶業が開発する全固体電池の試験モジュールをペイロードとして搭載し、地球から月面への輸送を行い、月面で技術実証試験を行う予定です。

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