2019年8月22日
加速する月面開発産業への対応を見据えたミッション及びスケジュールの変更を決定
株式会社ispace(本社:東京都港区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)は、2019年8月22日、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」で実施を予定しているミッション内容について、Mission1を「2021年 月着陸」、Mission2を「2023年 月着陸&探査」に変更することを発表致しました。
宇宙産業の市場規模は成長し続けており、国家や民間問わず宇宙活動が活発になってきています。アメリカ航空宇宙局(以下、NASA)は、2018年より10年間でおよそ26億USドルの予算をかけて月面輸送事業者の育成を目指すプログラム「Commercial Lunar Payload Service(以下、CLPS(クリプス))」を開始しました。当該プログラムでは、早期の月面着陸に対してプライス・インセンティブを提供するなど、NASAによる早期月面着陸への強い要望があります。2018年11月にはCLPSに参加する事業者が選定され、HAKUTO-Rを運営するispaceも、アメリカの研究機関チャールズ・スターク・ドレイパー研究所がリードするチームのメンバーとして入札に参加をしています。月面開発企業としてグローバルで競争優位性を維持するために、マーケットの成長とそれに伴う事業機会の増加といった変化に迅速に対応していく必要があります。このCLPSをはじめとした世界の大きな潮流を捉え、事業化をより確かなものにするため、検討を重ねた結果、HAKUTO-R内でのNASA CLPSの実行も見据えて、ミッション内容を変更することを決定しました。
NASAプログラムに対応するためには、NASAが定めるガイドラインを満たす必要があり、例えばCLPSでは月着陸船(ランダー)の最終製造をアメリカ企業が行うことや部品の50%超をアメリカから調達するなど、これまでの部品調達、組立、試験の計画を見直す必要があります。また、HAKUTO-Rの内部要因として開発上のチャレンジに伴うスケジュールの変更の必要性も生じています。特に構造系や推進系の開発において、ランダーのボディの強度の改善や推進剤を流す配管の設計に当初計画より長く時間を要していましたが、改善と検証を繰り返しながら、一つ一つ課題を解決してきています。そのため、スタートアップの限られたリソースの中では、当初計画の月周回用ランダーに加え、NASA CLPSにも対応可能なランダーの2つを同時並行で実行することはリスクが非常に高いと判断しました。より大きな機会を提供できる月面着陸用ランダーの開発にフォーカスするため、スケジュールを変更して初回のミッションから月面着陸を目指すことにしました。今後は、月着陸船に必要な機能として着陸脚の開発、地上からランダーを管制するアンテナ地上局の契約、ミッションコントロールセンターの設計に加え、月面着陸のオペレーション計画とトレーニング計画の立案を進めていきます。
引き続きHAKUTO-Rは、パートナー企業の皆様、そして多くの皆様の力を借りて、課題を一つ一つ解決しながら、月面着陸に向けて一歩ずつ進んでまいります。
■ 株式会社ispace http://ispace-inc.com/jpn
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。2018年2月までにシリーズA国内過去最高額となる103.5億円の資金調達を実施。日本初民間開発の月着陸船による「月面着陸」と「月面探査」の2つのミッションを行うプログラム「HAKUTO-R」を発表。アメリカSpaceX社のFalcon 9ロケットで2021年と2023年に打ち上げ予定。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動。
■ HAKUTO-R http://ispace-inc.com/hakuto-r
HAKUTO-Rは、ispaceが2023年までに行う史上初の民間月面探査プログラムです。独自のランダーとローバーを開発して、2021年に月面着陸と2023年に月面探査の2回のミッションを行います。SpaceXのFalcon 9を使用し、それぞれ2021年に月面着陸ミッション、そして2023年に月面探査ミッションの打ち上げを行う予定です。