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ispace、英国国立レスター大学との共同研究で、月面での越夜に挑む

2024年5月23日

株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)は、英国国立レスター大学との間で、月面での越夜に関する技術的な共同開発および、将来的な月面ミッションでの実証実験について合意しましたので、お知らせいたします。

ispaceは、ispaceの欧州法人であるispace EUROPE S.A.を通じレスター大学と、現在日本法人で開発中のシリーズ3ランダー(月着陸船)およびローバー(月面探査車)の拡張機能としてラジオアイソトープヒーターユニットを搭載し、月面での越夜に挑戦するための戦略的なコンサルティング契約を締結しました。同大学は、英国宇宙庁が助成するInternational Bilateral Fundのフェーズ1、2を獲得しており、将来の月面ミッションにおいて越夜技術を活用するミッションコンセプトを作成しています。

月面では、気温が摂氏マイナス170度まで下がる夜間が約2週間続き、その間一度も太陽が月面を照らすことはなく、また月面において太陽光エネルギーを利用した発電等も実施することができません。そのため、月面において長期ミッションを実現するためには、過酷な低温環境となる夜間を越えて活動を再開させるための新しい技術やシステムが必要不可欠になります。

左からレスター大学Dr. Hannah Sargeant、Ramy Mesalam、
ispace/Meridian Space Command Sam Richards、 ispace 中上 禎章、 ispace CRO 斉木敦史

レスター大学の宇宙原子力発電グループは、欧州宇宙機関(ESA)のEuropean Devices Using Radioisotope Energy (ENDURE)プログラムからの資金援助をはじめ、英国宇宙庁からも多大な支援を受けながら10年以上にわたり、ラジオアイソトープによる発電システムを研究開発してきました。この発電システムはラジオアイソトープの崩壊熱を利用して宇宙機に熱を供給することができ、また熱から電気を作り、主要サブシステムに電力を供給することが出来る仕組みになっています。

⚫︎ プロジェクトリーダー・レスター大学物理学天文学部 ハンナ・サージェント博士のコメント

「レスター大学が国立原子力研究所と共同で開発した、ラジオアイソトープ発電に関する技術は、現在行っている様々な試験で非常に良好な結果が確認されています。ispaceとのプロジェクトでは、宇宙機が越夜を成功させるために必要な熱の供給にラジオアイソトープヒーターユニットを使用し、実証試験を行う予定です。

International Bilateral Fundのフェーズ1は、海外パートナーと共に電力のニーズや優先順位の理解促進用途で使用し、フェーズ2では、本ミッションに対するコンセプトの実現性を実証するために、検証に加えて実証実験を実施する予定です。さらに、民間および商業宇宙産業全体に向けて、過酷な環境下における電力需要を満たす技術として示す機会となります。」

⚫︎ 株式会社ispace Founder & CEO 袴田武史のコメント

「ispaceとレスター大学の協業により、月面での越夜技術を本格的な実証に向けてスタートできることを大変うれしく思います。月面での越夜は、今後の月面探査・活動において欠かせない機能になります。この機能がispaceのランダーやローバーに搭載されると、今後多くの月のプレーヤーに対して、より長期的かつ多様なニーズに対応した月面ミッションを提供できるようになり、シスルナ経済圏発展に非常に大きな一歩になります。

ispaceは現在、2023年10月に採択された、経済産業省が実施する「中小企業イノベーション創出推進事業」 において交付された補助金を活用して、シリーズ3 ランダーの設計・開発を進めています。月プレーヤーのニーズに合わせてこのシリーズ3の機能を将来的に高めていくために、当越夜技術以外にも、今後も多くの企業や機関との協議を行ってまいります。 」

⚫︎ 株式会社ispace (https://ispace-inc.com/jpn/)について

「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約300名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行う。2022年12月11日には SpaceXのFalcon 9を使用し、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了。続く2024年冬[i]にミッション2の打ち上げを、2026年[ii]にミッション3、2027年に[iii]ミッション6の打ち上げを行う予定。

ミッション1の目的は、ランダーの設計および技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化であり、ミッション1マイルストーンの10段階の内Success8まで成功を収めることができ、Success9中においても、着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現する上での貴重なデータやノウハウなどを獲得することに成功。ミッション1で得られたデータやノウハウは、後続するミッション2へフィードバックされる予定。更にミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供によってNASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。

⚫︎ 英国国立レスター大学(https://le.ac.uk)について

レスター大学は、研究、教育、高等教育への幅広い分野で優秀な人材が集まる国際的に有名な大学で、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)世界大学ランキング2021ではトップ30に選ばれた。89%の研究成果が世界トップレベルで国際的に優れていることが評価され、社会、健康、文化、環境に幅広く影響を与えている。同大学には、20,000人以上の学生とおよそ4,000人の職員が在籍している。

⚫︎ スペース・パーク・レスター(www.space-park.co.uk)について

スペース・パーク・レスターは、レスター大学が率いるパートナーシップにより設立された、英国宇宙分野の最前線に位置するコミュニティー。宇宙と地球観測における革新的な研究、企業、および教育のための世界有数のクラスターであるスペース・パーク・レスターは、産業の発展や成長に協力的な拠点となる。

英国欧州宇宙機関の宇宙飛行士ティム・ピーク少佐によって2022年春にオープンしたスペース・パーク・レスターは、研究、開発、製造に関する最先端の施設を提供している。本施設には、衛星の設計やエンジニアリング、データ応用に至るまで、エンド・ツー・エンドのライフサイクルをカバーする能力と企業が集まり、他にはないコラボレーション機会を創出することができる。

 

[i]   2024年5月時点の想定

[ii]   2024年5月時点の想定

[iii]  2024年5月時点の想定

 

【報道関係者からの問い合わせ先:】

ispace, 広報

Email: publicrelations@ispace-inc.com

 

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