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ispace、ミッション2にて月に輸送するマイクロローバーのデザインを発表

2023年11月16日

最速2024年冬[i]の打ち上げに向け、月着陸船フライトモデルの組み立ても進行中
ミッションは月面着陸から月面探査へ

株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)は、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2において月に輸送予定である、欧州子会社が開発するマイクロローバー(小型月面探査車)の最終デザインを公開したことをお知らせいたします。

マイクロローバーのビジュアル

  • ミッション2について

2024年[ii]の打ち上げが予定されている民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のミッション2の目的は、ミッション1で得た成果を踏まえた月着陸船(ランダー)の設計・技術、月面輸送サービスおよび月面データサービスの提供という事業モデルの更なる検証と強化です。ミッション2では、ispaceが中長期的に目指すシスルナ(cislunar: 地球と月の間)経済圏の構築を推進する上で重要施策となる、資源探査の初期的な取り組みを自社開発のマイクロローバーを中心に実施いたします。

 

  • ミッション2のマイクロローバーについて

ミッション2に向けて欧州子会社であるispace Europeが開発を進めているマイクロローバーは、高さ26 cm、幅31.5 cm、全長54 cm、重さ約5 kg [iii]です。ランダーの上部にあるペイロードベイに格納され、月面着陸後に展開機構を用いて月面への着地と走行のための展開を行う計画です。軽量かつロケットの打ち上げ等の振動に耐える頑丈性を実現するために、躯体にはCFRP(炭素繊維複合材料)が採用されています。

ローバー前方にはHDカメラが搭載されており、月面上での撮影が可能です。月の特殊なレゴリス環境の上でも安定した走行ができるように、車輪の形状が工夫されています。コマンドやデータの送受信はランダーを経由して管制室と行われます。

更にローバーの前方にはHAKUTO-Rのコーポレートパートナー企業であるEpiroc AB社が開発するスコップを搭載。スコップを使用して月のレゴリスを採取し、ローバーに搭載したカメラで採取物の撮影を行う計画です。

スウェーデンに本社を置くEpiroc AB社とispaceは、HAKUTO-Rコーポレートパートナー契約を締結し、ミッション2において、ispace EuropeがNASAと締結した月のレゴリスの採取とNASAへの所有権譲渡に関する活動において協力することとなりました。2023年11月16日に行われた記者会見においてEpiroc AB社のGlobal Manager Acquisitions and Partnerships Miriam Bergvall氏は、鉱業とインフラ産業の生産性および持続可能性をリードするEpiroc AB社とispaceとの間で行われる、月のレゴリスを採取するスコップの共同開発について語りました。最先端の現場における資源開発をサポートするためにパートナーシップを拡大する取り組みが、両社の間で継続しています。

ミッション2では、マイクロローバーを使用して月のレゴリスを採取し、その所有権を顧客であるNASAに譲渡する、NASAとの月資源商取引プログラムを実施する予定です。2020年12月に当社欧州子会社であるispace EuropeはNASAとこの取り組みについて契約を締結しています。

また、マイクロローバーはルクセンブルク宇宙機関が管理し欧州宇宙機関が実施するLuxIMPULSEプログラム の一環として、ルクセンブルク宇宙機関との共同資金で開発を行っています。ispace Europeは現在マイクロローバーのエンジニアリングモデルを開発しており、今後は環境試験の完了後、フライトモデルの開発をし、2024年の夏頃[iv]にランダーへの搭載を日本で行う予定です。

 

  • ミッション2のランダー開発状況の進捗

ミッション2で使用されるランダーについては、2023年9月からフライトモデルの組み立てを筑波の施設で行っており、2024年の春頃[v]を目途に組み立てを完了、その後打ち上げ前の最終的な環境試験の実施を予定しています。現在のところ、ミッション2の打ち上げにはミッション1に続きSpaceXのFalcon 9が使用され、最速で2024年冬[vi]の打ち上げを計画しています。

ミッション2では、基本的にミッション1と同様のランダーモデルが使用される予定であり、ミッション1での経験を踏襲して効率的な開発と組み立てが日々進められています。一方で、ispaceは2023年4月のミッション1のマイルストーンであるSuccess9(月面着陸の完了)およびSuccess10(月面着陸後の安定状態の確立)の未達を受け、同年5月には、着陸時の問題および次のミッションへ向けた改良点を特定し発表しております。これを踏まえ、今回ミッション2で使用されるランダーでは、必要なソフトウェアの改良や着陸シミュレーション範囲の拡大、着陸系センサーのフィールド試験の追加実施等が反映され、ミッションの精度を一層向上させることを目指しています。

今般ispaceは、このミッション2で使用されるランダー(旧Series1ランダー)モデルを新たにRESILIENCE(レジリエンス)と命名しました。RESILIENCEは日本語で「再起」や「復活」「回復」等の意味であり、ispaceがミッション1での月面着陸の失敗を有効に活用し、迅速かつしなやかに再起するという、”Never Quit the Lunar Quest”の精神が込められた名称となります。ispaceはRESILIENCEランダーと共に、民間企業による確実な月面着陸を目指します。

ミッション2で使用するRESILIENCEランダーのフライトモデルの一部

ispaceのエンジニアがRESILIENCEランダーのフライトモデルを組み立てている様子

(ご参考)HAKUTO-Rミッション2ペイロードについて

ランダーの上部にはペイロードの搭載が可能で、ミッション2では5個のペイロードを輸送予定です。

  • HAKUTO-Rのコーポレートパートナーである高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置
  • 株式会社ユーグレナの月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型のモジュール
  • 台湾の国立中央大学宇宙科学工学科が開発する深宇宙放射線プローブ
  • 株式会社バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」
  • ispaceの欧州子会社ispace Europeが開発するマイクロローバー

 

  • HAKUTO-R新サポーティングカンパニーについて

新たに、千代田化工建設株式会社、株式会社バンダイナムコ研究所、The University of Adelaide、栗田工業株式会社がHAKUTO-Rプログラムのサポーティングカンパニーに参画することに合意いたしました。

  • 千代田化工建設株式会社はサポーティングカンパニーとして、月面産業の要となる資源(水など)利用推進に必要な探査技術・装置を含むサービス事業の開発に相互のナレッジと経験の共有し、月面産業の発展を目指します。
  • 株式会社バンダイナムコ研究所は「ガンダムオープンイノベーション」のプロジェクトとして、「機動戦士ガンダムUC」に登場する「宇宙世紀憲章」のデザインをモチーフに「未来へのメッセージ」を刻した特殊合金プレート「GOI宇宙世紀憲章プレート」を制作、ispaceがミッション2のペイロードとして月面に輸送する計画です。
  • The University of Adelaideはサポーティングカンパニーとして、ispaceの将来的な月面でのISRU活動をサポートします。HAKUTO-Rのミッション2では、ispaceとNASAが契約している宇宙資源(月のレゴリス)の採取、所有権の移転に関する活動をサポートする計画です。
  • 栗田工業株式会社はサポーティングカンパニーとして、月に存在する可能性が示唆されている水資源を活用した月面でのエネルギー製造(水素発生)をはじめ、宇宙インフラの持続的な構築へ貢献できる水の生成・回収に向けた技術の開発を目指します。

 

  • 株式会社ispace 代表取締役CEO & Founder 袴田 武史 コメント

「ミッション2における月面着陸および探査に向け、RESILIENCEランダーのフライトモデルの開発状況と、マイクロローバーの最終デザインを発表できることを嬉しく思います。月面輸送サービスと月面データサービスの提供には継続したミッションの運用が不可欠であり、約半年前にミッション1を終了してから短期間の間で必要な改善策を反映させ後続ミッションの開発を予定通り進捗させていること、そしてそれを実現している全ての従業員を誇りに思います。 RESILIENCEランダーの名前に込めた思いは、「再起」と「復活」への私たちの揺ぎ無いコミットメントです。ミッション1から継続してご支援いただいているHAKUTO-Rパートナーの皆様、パートナーとして新たにご参画いただいた皆様、そしてこの挑戦を応援いただいている株主の皆様、様々な形でご支援いただいている全ての皆様のご支援に感謝申し上げます。ミッション2の打ち上げに向け、引き続き気を引き締め必要な準備を進めてまいります。」 

 

「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在250名以上のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行う。2022年12月11日には SpaceXのFalcon 9を使用し、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了。続く2024年冬[vii]にミッション2の打ち上げを、2026年[viii]にミッション3の打ち上げを行う予定です。ミッション1の目的は、ランダーの設計および技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化であり、ミッション1マイルストーンの10段階の内Success8まで成功を収めることができ、Success9中においても、着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現する上での貴重なデータやノウハウなどを獲得することに成功。ミッション1で得られたデータやノウハウは、後続するミッション2へフィードバックされる予定。更にミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供によってNASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。

 

HAKUTO-Rは、ispaceが行うミッション1およびミッション2を総称する、民間月面探査プログラムです。独自のランダー(月着陸船)とローバー(月面探査車)を開発して、月面着陸と月面探査の2回のミッションを行います。SpaceXのFalcon 9を使用し、2022年にミッション1(月面着陸ミッション)のランダーの打ち上げを完了し、2024年冬[ix]にミッション2(月面探査ミッション)の打ち上げを行う予定です。

HAKUTO-Rのコーポレートパートナーには、日本航空株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、日本特殊陶業株式会社、シチズン時計株式会社、スズキ株式会社、高砂熱学工業株式会社、株式会社三井住友銀行、SMBC日興証券株式会社、Sky株式会社、Epiroc ABが参加しています。

 

[i]   2023年11月時点の想定

[ii]    2023年11月時点の想定

[iii]   2023年11月時点の想定

[iv]   2023年11月時点の想定

[v]    2023年11月時点の想定

[vi]   2023年11月時点の想定

[vii]   2023年11月時点の想定

[viii]   2023年11月時点の想定

[ix]    2023年11月時点の想定

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