2023年9月28日
米国事業を強化し、米国顧客による月面開発支援を加速
ispace technologies U.S., inc. (以下ispace U.S.) は、米国コロラド州デンバーに新たに米国本社を開設し、本日、本格運用を開始したことをお知らせいたします。新米国本社には現在進行中のミッション3ランダー(月着陸船)の開発を行う機能に加え、将来的にランダーの製造も可能となる施設が増強されました。
ispace U.S.は、米国内の政府系機関、研究機関や民間企業などの顧客にサービスを提供するための中心拠点です。新たな米国本社の施設により、米国発のランダーの設計・製造・運用が可能となるだけでなく、米国の様々な月探査ミッションの戦略的パートナーとしてispace U.S.の地位を確立させることを目指します。同時に、米国、日本、ルクセンブルクという世界3拠点の事業体によるグローバル・プレゼンスを持つ当社固有の強みを活かし、世界中の政府や民間からの顧客獲得を目指します。
■ 株式会社ispace 代表取締役CEO & Founder 袴田 武史コメント
「シスルナ経済圏構築に向けた更なる一歩をispace U.S.が踏み出したことを嬉しく思います。ispaceはこれまで米国拠点へ既に4,000万ドルを超える投資を行ってきており、これは私たちispaceによる米国市場への強いコミットメントの表れです。米国における政府ミッションとシスルナ経済圏の構築に貢献するべく、今後も米国への投資を拡大させていきます。」
■ ispace U.S. CEO Ronald J. Garan Jr. (ロナルド・ギャレン)コメント
「新米国本社の設立は、ispace U.S. の歴史における新たな章の始まりです。航空宇宙人材、最先端の研究機関、堅牢なインフラによって生み出される豊かなエコシステムを持つデンバーは、ランダーの開発拠点として理想的な場所であり、主要な交通拠点やDenver Tech Centerにも近接しています。私たちは、主にNASAのCLPSプログラムやその他ミッションを通じて、米国が月に再び回帰し、更にその先へ到達する挑戦を戦略的に支援します。」
■ ispace U.S. 本社に関して
現在、米国本社では80名以上の社員が活動しており、ランダーの設計・製造に加え、後続するミッションに向けて、年内にも100名を超える規模に成長する計画です。地球から月への輸送インフラを提供するという目標の実現に向け、新本社の建物の立地は慎重に選定されました。
【特徴】
● センテニアル空港とデンバー国際空港から近接した立地(住所:12876 E Adam Aircraft Circle)
● 熟練したエンジニアや技術者を含む、デンバーの強力な航空宇宙コミュニティへのアクセスが可能
■ 米国開発のAPEX 1.0ランダーに関して
ispace U.S.が開発するAPEX1.0ランダー(旧Series2ランダー)は、現在、ispaceが提供可能な最も高性能なランダーです。2023年4月に当社初の月ミッションを行ったSeries1ランダーから得られたデータやノウハウを活用し、更なる性能の強化を目指しています。
【APEX 1.0ランダーの特徴】
● APEX1.0はispaceとして直接的に月に向かう最初のミッションであり、短い期間で月へ到達できる軌道を採用。これは打ち上げ条件に自由度を与え、ミッション成功の確度が向上
● 本軌道を採用する代わりに一部のペイロード容量を燃料に充てる必要があるものの、引き続き、Series1ランダーの10倍以上のペイロード容量となる、最大300kgのペイロードを月面に輸送可能な設計。将来的には拡大する顧客の要求に応えるために、APEXシリーズのペイロード容量を段階的に増加させ、最大500kgのペイロード設計容量の実現を目指す
● 地球と月の間のシスルナ空間、および月の裏側から地球への通信をサポートする上で最適な、リレー衛星を搭載する専用のペイロードエリアを完備
● 月の周回衛星や、月面ペイロード、月面展開ペイロード(小型ローバー等)等、様々ペイロードを月の裏側や表側、極域や赤道付近などに輸送可能
● 非常に慎重な取り扱いを要するペイロードを保護可能な、高度な防振機能
● 主構造の耐久性、信頼性、製造性を向上させ、ペイロード搭載可能エリアの広範囲に渡り一貫した機械環境性能を実現
■ ミッション3の開発進捗
ispace U.S.は2022年にTeam Draperの一員としてアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月面輸送サービス(CLPS: Commercial Lunar Payload Services)に採択され、NASAによる3つの科学的ペイロードを月周回軌道及び月の裏側の極域へ輸送することを計画しています。
ispace U.S. はTeam Draper におけるランダー開発の役割を担っており、引き続き、APEX1.0ランダーを活用してCLPSのタスクオーダーCP-12の達成を目指します。
これまで開発されてきたSeries2ランダーからAPEX1.0ランダーへと移行するに当たり、今般、ispace U.S.はミッション3の打ち上げスケジュールを2025年から2026年[i]へと変更いたしました。本スケジュールの更新により、Team Draper及びispace U.S.は、APEX1.0ランダーの機能を強化させることで、慎重な取り扱いを要するペイロードの輸送に対応することが可能となります。またこれまでの開発過程において発生した一部の長納期品の調達の遅延についても、本スケジュールの更新より吸収することができます。
現在ispace U.S.は順調にミッション3に向けた開発を進捗させており、今回、ミッション運用に関する基本設計審査(PDR: Preliminary Design Review)を完了し、これにより、APEX1.0ランダーに関する全てのPDRプロセスを完了したことを発表いたしました。今後は、2023年度末までに[ii]ミッション3の次のマイルストーンである詳細設計審査(CDR:Critical Design Review)を完了する予定です。
■ ispaceの業績予想の修正
株式会社ispaceは、今回のスケジュール変更に伴い、通期の業績予想の修正を発表しました。Series2ランダーからAPEX1.0ランダーへの設計変更とミッション3の打ち上げスケジュールの更新により、今年度の売上高予想を、当初より31億46百万円減となる30億50百万円に下方修正しました。今回の減少の9割以上が、ミッション3のペイロードサービスの売り上げ計上のタイミングが当初予想よりも遅れ、翌期以降に繰り延べられたことによるものです。これは、当社が採用する会計手法である原価回収基準に基づいて、ミッション3の原価発生の遅延がそのまま売上計上の遅延となって反映されることに起因しており、現時点でミッション3の契約総額自体には大きな変更等は発生しない見込みです。また、当期純損益については、当初予想より33億85百万円増の-45億4百万円に修正いたしました。これは、2023年8月にミッション1における月保険が受領されたことにより、当期純損益が増加したものです。
■ ispace technologies, U.S., inc. (https://ispace-inc.com/us/) について
コロラド州デンバー郊外に位置する、株式会社ispace の子会社であり、地球から月への輸送サービスを政府及び民間顧客に提供する米国の月開発企業です。月の資源活用に着目し、月、及び地球と月の間において人類の生活圏、経済圏を構築することを目指しています。ispace U.S.は米国で設計・製造・打ち上げが行われるAPEX1.0ランダー開発の中心地であると同時に、北米における事業の拠点としての役割を担っています。Team Draperの一員として、アメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services, CLPS)に採択され、NASAが後援する3つの科学ペイロードを月周回軌道及び月面へ輸送する予定です。ispace U.S. CEOのRonald J. Garan Jr.は元NASA宇宙飛行士であり、宇宙産業における第一人者です。彼を含むispace U.S.の経営陣には、米国の数々の宇宙プログラムにおいて活躍したプロフェッショナルが集結しています。
■ 株式会社ispace (https://ispace-inc.com/)について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業です。日本、ルクセンブルク、米国の3拠点で活動し、現在250名以上のスタッフが在籍しています。2010年に設立され、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営。その後月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っています。SpaceXのFalcon 9を使用し、2022年12月11日にミッション1のランダーの打ち上げを完了。2024年[iii]にミッション2の打ち上げを行う予定です。ミッション1の目的は、ランダーの設計及び技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証及び強化であり、ミッション1マイルストーンの10段階の内Success8まで成功を収めることができ、Success9中においても、着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現する上での貴重なデータやノウハウなどを獲得することが出来ました。ミッション1で得られたデータやノウハウは、後続するミッション2へフィードバックされます。更にミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供によってNASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画です。
[i] 2023年9月時点の想定
[ii] 2023年9月時点の想定
[iii] 2023年9月時点の想定